データ分析_実践の第一歩

 データ分析をするに当たって、まずはシンプルな課題に対して、シンプルな分析を行うことをお勧めします。それにより分析の肌感覚を掴み、小さな成功体験を積むことで、組織内でのデータ活用に対する信頼を得るきっかけにすることができます。

では、アクションが行いやすく、取り扱いやすいデータをもとにしてできる分析」とはどのようなものでしょうか。

■分けて、見る

 初期のステップとして、「データの可視化」は重要であり、それだけで得られる発見は多いです。
例えば、従業員満足度調査で、入社経路、入社時期、職種などのセグメントに分け、各セグメントの満足度を確認することで、特に満足度の低い層を発見することができ、施策の対象や、その内容を細かに吟味することができます。

■組み合わせて、見る

 複数の変数を組み合わせて見ることで、様々な分析ができます。
例えば、労働時間と従業員満足度の関係を分析したり、管理職のもとに所属するメンバー数と満足度の関係を分析することで適正な管理スパンの参考情報を得たりすることができます。

ポイントとしては、変数同士の関係を散布図で確認することで、線形関係の強さを示す相関係数を確認するだけでは見落としてしまう発見ができる場合があります。

■時系列でみる

 パルスサーベイのように時系列で見ることも、有効な手法です。
 サーベイに対して、肯定的に回答しやすい人、しにくい人がいるので、一時点では把握が難しい場合でも、時系列で見ることで、「回答の肯定度が低下していれば、ベースラインの心的状態に関わらず、コンディションが悪化している」と考えられ、該当する回答者へのフォローのアクションを行うことにつなげられます。

■活躍者分析

 比較的よく行われる分析として、『活躍者分析』があります。例えば、「採用時の見極め基準の設計」や「昇格基準の設計」、あるいは「コンピテンシーの抽出」など、その応用場面は多岐にわたります。

このような活躍者分析は

・目的変数として『活躍状況を表す』変数
・説明変数として『活躍の要因となる』変数

を用いることによって実現できます。

例えば、人事評価などのオペレーションデータ(目的変数)と、適性検査などのアセスメントデータ(説明変数)を用いることができれば、一歩目の分析ができます。

 目的変数が「活躍/非活躍」のような質的変数であれば、t検定を用いることによって、両群で差がある適性や行動特徴を確認できます。
あるいは、目的変数が「目標達成率」のような量的変数であれば、それと適性や行動特徴相関係数を算出することで、両者の関係を確認することができます。

それによって、活躍状況適性や行動特徴の間に関係性が見られれば、その適性や行動特徴を『高業績者の特徴』として考え、コンピテンシー設計につなげることができます。

また、これらの分析により活躍度の予測可能性の見極めを行った後、回帰分析や、機械学習による活躍予測を行うこともできます。

 物事を説明するときに、複雑さを排除した単純な理論の方がよいという「オッカムの剃刀」という原理がありますが、データ分析においても有効です。

複雑な分析による落とし穴にはまらないためにも、何を知りたいかを明らかにしたうえで、仮説を設定し、シンプルな分析から始めることが推奨されます。

まずは、手元にあるデータからでも分析をスタートし、次のステップを検討する際には、場合によっては外部専門家の活用を検討することも有効です。

 分析はあくまで手段であり、目的ではありません。適切なデータ分析・活用は、人事課題を解決し、企業経営に貢献し、従業員のエンゲージメントを高める強力なツールになります。

どのようなデータで、何の傾向を把握・予測し、結果を何に活用するかを意識しながら分析を進めることが重要です。


クリックありがとうございます。
-------------------------------------
にほんブログ村 経営ブログへ

にほんブログ村 士業ブログへ



-------------------------------------