人的資本経営について

 ヒト、モノ、カネは経営の三大資源といわれます。中でも今、ヒト(人材)への注目が急速に高まっています。人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、企業価値向上につなげる『人的資本経営』を表明する企業が国内外で増加しています。

 背景にあるのは産業構造の変化です。2次産業が主流の時代は、いかに早く安く生産するかが企業の競争力の源泉でした。今は「何を」つくるか、創造性と革新力が問われます。これらは製造装置のような有形資産からは生じず、人材などの無形資産から生まれます。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や、新型コロナウイルスの感染拡大などで経営環境は大きく変化しています。先が読めない時代だからこそ、競争力の源泉である人材に注目が集まっているようです。女性管理職比率や離職率など、人材の活躍・育成状況の情報開示を求める動きが広がっていることも理由のようです。

働き方改革や女性活躍推進など、企業は人事施策の見直しを進めてきました。ただ人的資本経営へのシフトはそうした流れとは別です。人的資本経営は、『経営戦略』と強く結びついているのが特徴です。企業価値を高めるためにはどんな人材が必要なのかを経営戦略から逆算して人材戦略を立てようとする動きです。

 経済産業省は、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかという点について、2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」が示した内容を深掘りするため、「人的資本経営の実現に向けた検討会」を設置し、議論を重ねてきました。
この度、その検討会の報告書に「実践事例集」を追加する形でまとめた「人材版伊藤レポート2.0」とともに、併せて、「人的資本経営に関する調査 集計結果」を公表しています。

「人材版伊藤レポート2.0」 は、経営陣が主導して策定・実行する、経営戦略と連動した人材戦略について、3 つの視点(Perspectives)と5 つの共通要素(Common Factors)を、以下のとおり示しています。

人材戦略は、産業や企業より異なるが、俯瞰してみると、以下「3つの視点」が存在


①経営戦略と連動しているか
 ・CHRO(Chief Human Resource Officer)の設置
 ・全社的経営課題の抽出 
②目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握できているか

 ・As is – To beギャップの定量把握
③人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着しているか

人材戦略の具体的な内容について、5つの共通要素を抽出


①動的な人材ポートフォリオ:目指すべきビジネスモデルや経営戦略の実現に向けて、多様な個人が活躍する人材ポートフォリオを構築できているかという要素
 -各事業が中長期的に必要とする人材の質と量を整理
 -現状とのギャップを明確にした上で、人事施策を立案
  ・社員の再配置
  ・外部人材の獲得
  ・アルムナイネットワーク
  ・一律新卒定期採用の見直し
  ・博士人材等、自ら課題設定ができ、解決できる人材の獲得


②知・経験のダイバーシティ&インクルージョン:人材ポートフォリオが構築できても、多様な個人ひとりひとりや、チーム・組織が活性化されていなければ、生産性の向上やイノベーションの創出にはつながらない。こうした観点から、個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトプット・アウトカムにつながる環境にあるのか
  -「同質性が高いチーム」から「多様なチーム」への変革
  ・女性の活躍推進
  ・D&Iに係るKPIの設置
  ・マネジャー同士が互いに学び合う機会の確保


③リスキル・学び直し:目指すべき将来と現在との間のスキルギャップを埋めていく
  ・社員一人ひとりの過去の経験、スキルの把握
  ・キャリア上の意向を確認し理解する機会の確保
  ・強い意欲を持って取り組める学習領域の提供
  ・経営戦略実現の障害になっているスキルや専門性の特定
  ・社内外からのキーパーソン登用(社内でのスキル伝授)
  ・リスキルの処遇と報酬の連動
    _成果に応じ、キャリアプランや報酬等の処遇に反映できる仕組み
    _組織のニーズのみに限定されない社員の自主的な学び直しへの配慮


④社員エンゲージメント:多様な個人が主体的、意欲的に取り組めているかといった要素も必要
  ・社内公募による異動
  ・ウェルビーイングの推進


⑤時間や場所にとらわれない働き方:新型コロナウイルス感染症への対応の中で、更に明確になった要素
  ・テレワーク体制がとれるためデジタル化の推進
  ・出社とテレワークのハイブリッド


企業においては、こうした共通の要素に加え、自社の経営戦略上重要な人材アジェンダについて、経営戦略とのつながりを意識しながら、具体的な戦略・アクション・KPIを考えることが有効である。

[出所]report2.0.pdf (meti.go.jp)

これらの要素を、自社の現状・課題に当てはめてみた上で、何をアクションしKPIしていくのかを検討することが必要という文脈になっています。

アクションしていく上で1番のポイントは、「経営戦略と人材戦略が連動している」ことである。経営層と一体となって取り組んでいくことが求められます。

[参考]


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