人材開発とは

 人材開発とは何か?と問われると一見簡単そうで難しい質問です。書籍『人材開発・組織開発コンサルティング』によると、人材開発の学問的定義として代表的なものに以下があるそうです。

 「組織の戦略実現や目標達成のために、組織メンバーの必要となるような知識、スキル、コンピテンシー、信念を提供し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援すること」

ポイントとしては、人材開発の本懐は、「組織の戦略・目標を実現・達成すること」であり、学びを通じて「経営・現場にインパクトを与える」ことが人材開発の眼目になるということです。

また、企業の人材開発においては、「学び」を「自己目的化」してはいけません。以下図表の4つの象限のなかで、「人材開発」と呼べるのは①の象限だけです。

[出所]書籍『人材開発・組織開発コンサルティング』を基に著者作成

よく陥りがちなのは②の状態です。人は研修などの場面では学んでいたし、変わっていたけれども、経営や現場にインパクトがまったくもたらされなかったという状況です。

こうした状況は、「学び温泉」「ワークショップ温泉」と揶揄されることがあります。

人材開発は、人が学び、変わる「学習軸」だけでなく、経営にインパクトを与える「経営軸」の両軸を意識する必要があります。どれだけ学びがあったとしても、経営のベクトルとあっていない場合は成果につながることはありません。

■人材開発に係る8つの理論・概念

書籍『人材開発・組織開発コンサルティング』では、人材開発の研究の中で、近年重要となっている以下8つの理論・概念を紹介しています。

 1.組織社会化
 2.組織再社会化
 3.経験学習
 4.職場学習
 5.越境学習
 6.研修転移
 7.オンライン学習
 8.リーダーシップ開発

1.組織社会化
  組織が目標達成のために、新しく加わったメンバーに対して、必要な知識や信念や態度といったものを獲得できるようにし、その組織の一員にしてしまうこと、一人前にしてしまうことを言います。

一般的には、OJTや管理者などからの助言・指導・フィードバックを受けることで、達成する社会化が多いと考えられます。こうした社会化の促進者のことを「社会化エージェント」と呼ぶこともあります。

 もちろん、組織社会化のプロセスは、必ずしも順風満帆に進むわけではありません。当初持っていた組織への期待が裏切られて「リアリティショック」を受けることもあります。逆に、思っていたよりも良かったという「ポジティブサプライズ」を経験することもあります。

 能動的社会化(自らをいかに組織社会化していくか)の過程において、新規参入者は、自らを変えるべく、組織に対して様々な「プロアクティブ行動」をとります。プロアクティブ行動とは、「新規参入者自らが、現在の職場環境を改善したり、新しい環境を構築したりしつつ、自らを社会化していく自発的な行動のこと」を言います。

 新規参入者がプロアクティブ行動をとるかそうでないかは、

①管理職によっていかにサポートされているか
②本人のパーソナリティ 
③本人の持つ自己効力感や責任感など 

によって決まると言われています。

能動的社会化の観点から、いかにプロアクティブ行動をとってもらう環境をつくるかという視点が重要です。

次回は、残りの7つの理論・概念について投稿していきたいと思います。


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