人材開発 8つの理論・概念(前半)

書籍『人材開発・組織開発コンサルティング』では、人材開発の研究の中で、近年重要となっている以下8つの理論・概念を紹介しています。こちらの項目に沿って、ポイントを整理していきたいと思います。

なお、今回は、前半の4つについて記載していきます。

 1.組織社会化
 2.組織再社会化
 3.経験学習
 4.職場学習

 5.越境学習
 6.研修転移
 7.オンライン学習
 8.リーダーシップ開発

概要については、前回の投稿をご覧ください。

人材開発・組織開発について③_人材開発の理論・概念

1.組織社会化
  組織が目標達成のために、新しく加わったメンバーに対して、必要な知識や信念や態度といったものを獲得できるようにし、その組織の一員にしてしまうこと、一人前にしてしまうことを言います。

一般的には、OJTや管理者などからの助言・指導・フィードバックを受けることで、達成する社会化が多いと考えられます。こうした社会化の促進者のことを「社会化エージェント」と呼ぶこともあります。

 もちろん、組織社会化のプロセスは、必ずしも順風満帆に進むわけではありません。当初持っていた組織への期待が裏切られて「リアリティショック」を受けることもあります。逆に、思っていたよりも良かったという「ポジティブサプライズ」を経験することもあります。

 能動的社会化(自らをいかに組織社会化していくか)の過程において、新規参入者は、自らを変えるべく、組織に対して様々な「プロアクティブ行動」をとります。プロアクティブ行動とは、「新規参入者自らが、現在の職場環境を改善したり、新しい環境を構築したりしつつ、自らを社会化していく自発的な行動のこと」を言います。

 新規参入者がプロアクティブ行動をとるかそうでないかは、

①管理職によっていかにサポートされているか
②本人のパーソナリティ 
③本人の持つ自己効力感や責任感など 

によって決まると言われています。

能動的社会化の観点から、いかにプロアクティブ行動をとってもらう環境をつくるかという視点が重要です。

2.組織再社会化

 1の組織社会化は、新卒社員のように何色にも染まっていない新規参入者を組織の色に染め上げるイメージですが、キャリア採用者は前職の組織の色に染まっています。
そうした人が入社した場合、いったん、前職の組織の色を抜いてから、新たな色に染めなおす必要があります。これを組織再社会化といいます。

調査によると、キャリア採用者には以下4つの支援のあり方があるようです。

 ①セーフティ・ネット支援
 ②ネットワーク支援
 ③フィードッバック支援
 ④メンタリング支援

[出所]中原 淳著『人材開発・組織開発コンサルティング』を基に著者作成

上司によるサポート面でいうと、「馴染みの早さ」については、上記①③④が奏功するそうです。
一方、「個人のパフォーマンス」については、①②が奏功することが分かっています。

同僚によるサポート面については、「馴染みの早さ」については、上記①②④が奏功するそうです。
一方、「個人のパフォーマンス」については、①②が奏功することが分かっています。

ここで重要なのは、キャリア採用者は、異なる他者から、様々な支援を受けてこそ「組織に馴染み」かつ「成果発揮できる」ということです。

また、キャリア採用者は、支援を待つだけではなく、自ら助けて欲しいと援助を要請(ヘルプシーキング)したらい、自らフィードバックをもらいにいく(フィードバックシーキング)するなどの主体的な行動が馴染みの早さにつながります。

さらにキャリア採用者が、新しい組織に適応するためには、捨てる学び(アンラーニング)も必要であることがわかってきています。調査では、そのような人ほど、業務への慣れも早い傾向があることがわかっています。

3.経験学習

 経験学習は、人は、挑戦を含むような経験(ストレッチ)を積み重ね、そこで起こった出来事を内省することを通じて
自分の能力・スキルを高めることができる、と考える、人材開発の中でも最も基礎的かつ普及している理論の一つです。

 経験学習の理論は、日本に2000年代に輸入され、2010年代になって急速に普及しました。
昨今、様々な企業で導入されている、上司と部下が定期的に面談を持ち、部下の振り返りを促す、いわゆる1on1も、この経験学習の理論で説明できます。

4.職場学習

 職場学習とは、「人の学習は、職場における経験と意図的な内省、それらを支える、人々との関わりにある」と考える一種の理論群です。

最大の特徴は、「人の学習は、社会的なものであり、人は個人だけでは学べない」「人間の学習は、文脈(仕事をする職場・現場)と切り離して考えることはできない」「人間の学習は、公式の学習機会や教室だけで生起するのではなく、インフォーマルな現場で生起する」とみなす点です。

そのため、「何を学ぶか」と同時に「誰と学ぶか(誰に支えられて学ぶのか、どのような人間関係の中で学ぶのか)」や「どういう現場(職場風土の中)で学ぶのか」が問われます。

これまでのOJTを中心とした業務支援は、それを説明する「理論・概念の不全」に悩まされていました。OJTがいかにあるべきかを他者に記述・伝達しようとしても、「OJTは言ってみて、聞かせて、後は任せる」くらいしか、OJTを語る言葉がなかったのです。
言葉の不在は、実践の充実化を阻害します。結局、見様見真似で、勘と経験と度胸(KKD)でOJTを実践するしかありませんでした。

しかしながら、1990年代後半になって、「経験学習」や「職場学習」などの領域が生まれ、研究が進められるようになりました。
まったくのブラックボックスだった職場に、様々な概念が持ち込まれ、そこで何が起こっているか、どのような行動をとればどのような効果が生まれるか、が分かってきました。

職場には以下のような支援など、様々なものがあります。

 ①業務支援 教える、助言する(OJT)
 ②内省支援 気づかせる
 ③精神支援 励まし、褒める

研究では、日本のビジネスパーソンは、以下のような支援によって、成長や能力を実感していることがわかっています。
こうした他者からの支援を通して、人は職場で能力向上を果たすのです。

管理者から 精神支援 内省支援
同僚・同期 内省支援 業務支援
上位者   内省支援


クリックありがとうございます。
-------------------------------------
にほんブログ村 経営ブログへ

にほんブログ村 士業ブログへ



-------------------------------------