マーケティング_製品戦略について
製品戦略は、マーケティング・ミックスの1つの要素です。重要な意思決定事項としては、「製品ミックスの検討」、「製品ライフスタイルを考慮したマーケティングのアプローチ」、「ブランドの付与」などがあります。
■製品の本質と3つのレベル
消費者は、製品の物質的な価値だけを購入するのではなく『製品から得られる価値に対する期待』を買っています。
コトラーとアームストロングによると、製品のレベルを以下の3つに分けることができます。
1.顧客に提供しようとしている中核的なベネフィット(便益)やサービス
2.実際の製品の形態というレベルで、5つの特性を意味します。
・品質水準
・特徴
・デザイン
・ブランド名
・パッケージング
3.付随機能のレベル
・保証
・アフターサービス
・取り付け
・配達と信用供与(クレジット)
消費者にとって、製品は単に物理的な機能だけではなく、こうした3つのレベルの価値を持つという考え方を『拡張製品』といいます。
■製品の分類
製品は、消費される目的のちがいによって、大きく『消費財』と『生産財』に分けることができます。
・消費財
L個人や世帯がニーズを満たすために購入する製品・サービス
・生産財(産業材)
L消費財や他の生産財を作ったり、企業や組織が事業を運営するために購買する製品・サービス
①消費財の分類
消費財は、消費者の購買慣習にもとづいて、『最寄品』『買回品』『専門品』に分類することができます。
・最寄品
L消費者が頻繁に購入し、類似品の比較行動や購買行動に関して最小の努力しか払わない製品
・買回品
L消費者が購入するにあたって、類似品の探索に相当な時間と努力を費やし(比較購買)、十分に比較・検討する製品
・専門品
L消費者が魅力を感じてから手に入れるまでに、多くの時間と努力を費やし、価格に対する感応度が低い(高価でも購入をいとわない)製品
②生産財の分類
生産財は、一般的に以下に分類されます。
(1)原材料/半製品
・大量かつ低価格
・多くの流通段階を経る
・プロモーション活動はあまり行われない
・製品の差別化は行われない
・長期的な契約
(2-1)主要設備
・取引金額が大きい
・交渉期間が長い
・メーカーから直接購買する ※優れた販売組織が必要
(2-2)付属設備
・購買者の裾野が広い
・購入単価低い
・商社などを介して比較的長い流通経路
(3)部品/構成部品
・汎用的な部品を除き、生産者からユーザに直接販売されることが多い
・製品の価格と信頼性が重要
(4)消耗品
・最小の努力で購買される
・顧客数多い、単価低い ※最寄品と似た特徴
■製品ライフサイクル
製品やサービスが市場に導入されてから消滅するまでのステージ変化を説明する考え方として、製品ライフサイクルがあります。
導入期
製品を市場に導入した直後のフェーズです。市場は発展途上にあり、新技術の登場によって市場が創出されるケースもあります。製品が導入されたばかりのため、ユーザー数、売上、利益は小さいです。
特に技術革新があった場合、BtoB市場では大企業がイノベーターとなり、徐々に市場に浸透していきます。
成長期
顧客や市場に製品が認知され、急速に普及するフェーズです。製品やサービスの需要に加えて市場自体も拡大するため、売上が一気に増大します。生産効率の向上や市場が拡大するため、新規参入業者も多く競業が増える時期です。
この時に戦略をきちんと練り、差別化、製品の改良を実施することが重要です。往々にしてこの時期の新規参入で市場の問題が明確になってくる時期でもあります。
成熟期
市場が徐々に鈍化し始めます。ここまでに成長期で参入してきた企業もきちんとした戦略がない場合淘汰され始めます。製品、サービスを選ぶ際に、値段よりも市場に選ばれ続けるのかに重点を置いていないと、導入した製品、サービスを提供する企業自体がなくなってしまうことさえあります。
また、類似製品も多くなり価格競争が激化しますが、結局「選ばれる製品、サービスが適正価格になる」のもこの時期です。市場シェアがここで安定します。
飽和期
新規需要が頭打ちになるフェーズです。製品価格が大幅に下がり始め、売上、利益ともに停滞します。リピーター戦略でシェアを取れているか、または製品改良を行い、乗換え需要の創出戦略の時期になります。
衰退期
製品需要が更に減少します。多くの企業は徹底事業となり、残存者利益があるものの、技術革新で市場が一変したのであれば事業の維持は中々難しい状況と言えるでしょう。
■新製品開発プロセス
①アイデアの創出
Lブレーン・ストーミング
②アイデア・スクリーニング
・アイデアの絞り込み
・市場規模
・見込まれる収益性
・市場成長の可能性
・消費者ニーズとの合致
・製品の開発
・マーケティングに必要な経営資源の有無
③製品コンセプトの開発と検証
④製品化
L試作品
⑤テスト・マーケティング
⑥市場導入
■ブランド
ブランドとは、競合する製品やサービスと識別してもらうために用いるもので、ことば、記号、図形、もしくは、それらの結合のことを指します。
名称 :ブランド・ネーム
記号や図形:ブランド・マーク
1.ブランド付与のメリット
・買い手メリット
①模倣からの保護
②取引の円滑化
③価格維持や価格差異の根拠
④顧客の反復購買を促進
・売り手メリット
①商品の識別を可能に
②反復購買の目安
③探索コストと購入リスクを下げる
④ステイタス・シンボル
2.ブランド・エクイティ(ブランド資産)
ブランドの持つ無形資産としての価値を適正に評価したり、大きくしようとするマーケティングの考え方をブランド・ エクイティ(ブランド資産)といいます。構成する要素として以下5つの要素があります。
①ブランド・ロイヤルティ
②ブランド認知
③知覚品質
④ブランド連想
⑤その他の専有的な資産(特許、トレードマーク、チャネルの支配など)
3.ブランドの分類
①NBとPB
NB_製造業者が付与するブランド、ナショナル・ブランド
PB_流通業者が付与するブランド、プライベート・ブランド
・PBのプロモーションは、大々的な広告というよりは、小売業者の店頭におけるプロモーションで行われる。
・ジェネリック・ブランド
L特にブランド名をつけず、機能や品種を表す製品名をつける
L無印良品
4.ブランドの活用
①ブランド・ネームの選択
ブランド・ネームはブランドを構成する重要な要素であり、マーケティング戦略が成功するかどうかのカギを握る場合があります。
コトラーとアームストロングは、以下の項目に注意してブランド・ネームを選択するのが望ましいとしています。ブランド・ネームは、グローバル市場に対応可能なものにするように精査しなくてはなりません。
①製品のベネフィットや品質を示唆するもの
②発音しやすく、すぐに識別でき、覚えやすいもの
③目立つ名称であるもの
④外国語に訳しやすいこと
⑤登録商標
②ブランド付与の戦略
製品にブランドを付与する場合、以下4つの戦略が考えられます。
a)ライン拡張
既存の製品カテゴリー内で、従来のブランド・ネームを導入
b)ブランド拡張
新製品の導入にあたって、既成製品で成功したブランド・ネームを活用
例)トヨタ・ホーム、ソニー生命、ワタミ
c)マルチ・ブランド
同じカテゴリー内にある製品アイテムに対して、2つ以上の異なるブランドを用いる方法
・企業統合時に発生する
・新しい販売チャネルを開拓するとき
・廉価版ブランドを追加するとき
・海外の販売チャネル
※消費者が識別しにくい
※プロモーションコストかかる
d)新ブランド
企業ブランドやファミリブランドと呼ばれる製品カテゴリー単位のブランドをうまく活用