経営戦略について①_経営理念・企業ドメイン
■経営戦略の定義
経営戦略は、その重要性が認識されている一方で、理論と実務の双方でその認識が統一されているわけではありません。
しかしながら、おおむね以下のような共通認識は存在します。
①長期的な視点から企業の将来の方向性やあり方に一定の指針を与える
②企業と経営環境とのかかわり方を示す
③企業における様々な意思決定に指針を与える
上記を要約すると、経営戦略とは「企業と経営環境との関わり方を、将来志向的に示す構想であり、企業内の人々の意思決定の指針となるもの」と定義でき得ます。
■戦略と戦術のちがい
戦略とよく混同されるものに戦術があります。
これらの区別にもさまざまな解釈がありますが、一般的には次のような違いがあると認識されています。
戦略:長期的な視点から、一貫して追求されるべき全体的な方向性や方針を示すもの、及び、そうした方向性や方針を実現するための組織行動のあり方
戦術:その場の状況に応じて決められる、短期的で細やかな指針や組織行動そのもの
■経営戦略の階層性
一般に、経営戦略には階層性があると考えられています。特に、組織が高度に分化している大企業においては、組織の階層性にあわせるように以下3つの戦略レベルがあります。
①全社戦略(企業戦略)
・企業全体にかかわる戦略
②事業戦略(競争戦略)
・製品や事業にかかわる戦略であり、いかに競合他社に勝るだけの価値を顧客に提供できるか、という点が中心的な課題になる
③機能別戦略
・企業における組織単位ごとに、具体的な戦略を策定する
留意点としては、上記の階層性については、あくまで概念上の区分であることを認識しておく点があります。現実の企業経営では、3つの戦略レベルを縦断するような経営課題が生じることが多いからです。
例えば、情報化戦略についても、かつては単なる情報処理機能の問題でしたが、情報通信技術が進んでDXの重要性が増した現在では、機能別戦略のレベルではなく全体戦略に組み込んでいる企業もあります。
このような現実を踏まえると、以下のようなマトリックス構造で戦略全体と戦略項目の関係をとらえると理解しやすいと思います。
縦軸には経営戦略の階層があり、これらは組織やマネジメントの階層と合致しています。横軸には経営に影響する戦略項目の例が示されています。
このマトリックスを用いることによって、組織階層ごとの戦略項目の位置づけを明確にすることができます。
■経営環境の分析
経営に影響を与える環境条件としては、マクロ経済のファンダメンタルズ(為替レート、物価指数、景気動向など)や市場動向といった外部的要因だけではなく、企業内部における技術力やノウハウの蓄積、働き手の能力や価値観などの自社の経営資源も含まれます。
そのため、経営環境を外部環境と内部環境に分けて考えていく必要があります。
以下環境別の分析キーワードを整理します。
-外部環境
・マクロ環境:PEST分析
・ミクロ環境:3C分析
-内部環境
・コアコンピタンス
・ケイパビリテイ
・KFS/KSF
・ヒト・モノ・カネ・情報(環境・企業・情報処理特性)
経営戦略を策定するに当たって、自社を取り巻く外部環境とその変化を正しく認識し、自社の能力を正しく把握しておく必要があります。よく知られる手法は以下になります。
①SWOT分析
→クロスSWOT分析
②3C分析
自社・顧客・競合他社
■全社戦略
・ミッション・経営理念・ビジョン
・ドメイン
・「現在の事業領域」だけではなく「潜在的な事業領域」を含めて考えるのが一般的
・ドメインの定義は、経営戦略を策定するための最上位に位置する意思決定事項
企業ドメイン:全社戦略の事業領域
事業ドメイン:事業戦略レベルの事業領域
Lドメイン定義の意義
・経営資源の蓄積・調達・配分に指針を与える
・組織メンバーに意思決定の指針を与える
・組織の一体感を醸成させる
・シナジーや範囲の経済を生む土壌ができる
Lドメイン定義のアプローチ
・who:どのような顧客に焦点をあて
・how:どのような独自技術・サービス等やノウハウを持って
・what:顧客のどのようなニーズに応えるのか