2024年の賃上げ動向について
政府は、2024年度予算案において、「デフレからの完全脱却」に向けて、賃上げや人への投資に重点をおきました。
賃上げについては、2024年夏に「物価高を上回る賃上げ」の実現を目指すとして、24年度の与党税制改正与党税制改正大綱で賃上げ促進税制の拡充を明記したのに加え、予算案でも企業や医療、教育現場まで幅広い業種で賃上げの原資を確保しました。
足元で物価高は続いており、総務省が発表した11月の消費者物価指数(CPI、20年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.5%上昇しました。
物価高が起きている主要因は以下の2つです。
第一の要因は、2022年から続くロシアのウクライナ侵攻により、全世界的にエネルギー価格・食料価格が高騰していることです。
第二の要因は、昨今の記録的な「円安」です。日本が超低金利政策をとっているのに対し、諸外国が相次いで「利上げ」を行ってきているので、金利の低い円が売られて円が下落しているためです。
その打開策は、「実質賃金」を上昇させること、すなわち、賃金上昇が物価上昇に見合ったものにすることはきわめて重大な課題です。
なお「実質賃金」とは、労働対価として、貨幣で支払われる給与・賞与などを指す「名目賃金」から消費者物価指数に基づく物価変動の上昇分を差し引いたものです。そのため、物価による影響を受けない指標となっています。
しかしながら、厚生労働省が発表した2024年10月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上の事業所)によると、物価を考慮した1人当たりの「実質賃金」は前年同月比2.3%減り、19カ月連続のマイナスとなっています。
そのため、解決策の一つとして企業が賃上げを実施し賃金上昇を促していくことが求められています。
そのような情勢の中、連合は2023年12月1日、賃上げの要求水準を「5%以上」とする2024年春季労使交渉の闘争方針を正式決定しました。基本給を底上げするベースアップ(ベア)で3%以上を求め、23年の「5%程度」より表現を強めた方針となりました。
これから労使の動きが本格化する24年賃上げの見通しについて、エコノミストの分析によると、2.8~3.4%と2023年の賃上げ率「3.6%」に続き高い伸びとなる見通しです。
なお、持続的な経済成長には大企業を中心に高まる賃上げ機運を中小企業に波及させることがカギを握ります。