コーチング④_代表的な7つのスキル
今回は、コーチングにおける代表的な7つのスキルについて解説します。
1.聞く(傾聴)スキル
コーチに求められる「聞く能力」とは、クライアントが何をいわんとしているのか、あるいは、その発する言葉の言外にある本質は何なのかを聞き分け、正しく理解することにあります。
これらを実現するために、以下のようなポイントがあります。
①「聞く」ことに集中する
②相手の話の先読みや、結論の先取りをせず、最後まで聞く
③相手のノンバーバル(非言語)な情報を受け取る
④「聞いている」というサインを送る
⑤沈黙を共有する
2.「ペーシング」のスキル
対話を通じてクライアントの成長をサポートするコーチングでは、クライアントに「どれだけ話をしてもらえるか」が成果を大きく左右します。
クライアントが緊張感をもたず、信頼構築に欠かせない基本要素が「ペーシング」です。信頼感や安心感を醸成させるために相手に波長を合わせる、同調するといったことです。また、クライアントの話を否定せず、最後まで聞き、受け止めるという姿勢も含まれます。
3.「質問」のスキル
コーチングの「質問」に求められるのは、コーチが知りたい情報を手に入れることではなく、「相手の視点を広げ、オートクラインを起こさせること」です。
したがって、「相手に何をさせたいのか」「そこでどんな展開をさせたいのか」「どんな情報を手に入れたいのか」といって、質問の意図や目的を明確にすることが重要です。
コーチには、相手が置かれている状況を的確に判断し、どのようなタイミングや目的での質問が最も効果的であるかを判断する能力も求められています。
[質問の目的例]
・問題点をはっきりさせる
・考えを整理する
・物事を具体的にする
・視点を変える
・他の選択肢を出させる
・目的を設定する
・アイデアを出させる
・モチベーションを上げる
・価値観を知る
・気づき、発見を促す
①質問の種類
質問には、大きく分けて「クローズド・クエスチョン」と「オープン・クエスチョン」の2種類があります。
オープン・クエスチョンには、以下2種類があります。
限定質問:「いつ」「どこ」「誰」など、物事を特定していきます。行動プランをより明確にしたり、目標を具体的に設定する際に有効です。
拡大質問:「なぜ」「どうやって」を使います。考えを広げ、深める場合に効果的です。
②チャンクダウンとスライドアウト
「チャンクダウン」と「スライドアウト」は、コミュニケーションにおいて話を深めるための手法です。
チャンクを上げ下げすることで、コーチは情報度合いをコントロールしていきます。
「チャンクダウン」は、大きな課題を細分化し、具体的な解決策を考案するための手法です。
大きな課題を小さな課題に分割し、話が具体的になればなるほど、クライアントは行動をおこしやすくなります。
「スライドアウト」は、同レベルの選択肢を増やすために、チャンクを横方向に広い視野で見ることで、新たな視点やアイデアを得ることや、原因をリストアップする際に有効です。
4.「承認(アクノレッジメント)」のスキル
「相手のことを認める」という意の「承認」は、クライアントの自己成長に対する認知を促進する技術としてコーチングの中で重要な柱になります。
人は、自分の行動から自身の成長や変化を実感していきます。そのため、クライアントに現れる日々の違いや変化、成長、成果をコーチがいち早く気づき、伝えることで、クライアントには達成感とともに次に起こす行動を促進するエネルギーが備わります。
コーチは特に、次の3つの視点からクライアントを承認します。
①存在承認:相手の存在に気づいていることを伝える。
あいさつや、相手の状態を具体的事実として伝えます。
②成長承認:成長点を的確に伝える
相手の変化や成長に関わる事実を伝えます。
③成果承認:成果を伝える
成果を伝える「成果承認」は「ほめる」ことともいえます。さらに、クライアント自身が成功体験を言語化することでもモチベーションが上がるため、それを聞き出すこと自体が承認になる、ともいえます。
5.「フィードバック」のスキル
目指す目標や成長に対して、クライアントがどのような状態にあるかを第三者の視点で伝えることを「フィードバック」といいます。
第三者からの視点を通して自分を知ることは、的確な現状把握と、行動変容を起こすうえでも大きな原動力となります。
フィードバックは2つの視点があります。
①クライアントの状態を客観的事実として伝えるフィードバック
例)「すごく無理しているように見えます」
②クライアントの言動からコーチが感じる主観的事実を伝えるフィードバック
例)「現状に不満を持っているように感じられます」
以下は留意点になります。
①クライアント自身が第三者の視点を必要としていること
②行動変容が可能であること
③忠告や命令にならないこと
④適切なタイミングであること
⑤伝わっているかどうかを確認すること
⑥時制に注意すること
6.「提案」のスキル
コーチングにおける提案は、相手に新しい視点を提供し、ゴールに向けて飛躍的に行動することをサポートするためのものです。
「指示・命令」との大きな違いは「行動の選択権は受け手にある」という視点に立ったものであることです。
提案のポイント次のとおりです。
①Yes/Noの選択権は受け手にある
②許可を取ってから提案する
③提案は1回に1つ
④提案の内容を明確にしてから提案する
⑤正論ではなくストーリーを伝える
7.「要望(リクエスト)」のスキル
人は、無意識に自分の行動や思考に「枠」をつくっているため、コーチが「要望」することで相手の可能性を引き出し、その「枠」を超えるきっかけをつくり出します。「要望」も、提案と同様に、「行動の選択権は受け手にある」という視点に立ったものであるという意識が大切です。
効果的な要望のポイントは次のとおりです。
①ストレートに短く伝える
②相手に対する期待を込めて伝える
③必要があれえば、何度でも繰り返す