経営戦略について④_事業戦略(競争戦略)

 前回では、全社戦略(企業戦略)の経営資源の配分について書きました。今回は、全社戦略の事業戦略について、整理していきたいと思います。

[出所]一般社団法人 日本経営協会マネジメント検定テキストを基に著者作成

前回(経営戦略について③_経営資源の配分について)はこちらから

経営戦略について③_経営資源の配分

事業戦略(競争戦略)

 事業戦略は、経営戦略の階層性に合わせた戦略レベルの中では、これまで説明してきた全社戦略の下位に位置づけられます。

 事業戦略とは「顧客や競合他社などの事業環境が異なる個々の製品分野や事業の戦略」という意味ですが、一般的に競争戦略と同義で用いられることが多いです。

 競争戦略とは、個々の製品・事業の市場において競争優位を確保し、競争相手に打ち勝つための戦略のことを言います。

 事業戦略を広義に捉えると、競争戦略だけではなく、事業ごとの成長戦略や事業部門内の資源配分などを含めて考えることもできます。

 経営戦略論で最も著名な研究者の1人であるポーターは、以下3つの考え方を中心として体系的な競争戦略論を展開しました。ポーターの考え方の特徴は、外部の競争環境を正確に捉え、環境変化に適応しながら市場におけるポジショニングを確立した企業は、競合他社に対する競争優位を築くことができる、とする点にあります。

1.ファイブ・フォース分析
  外部環境(競争環境)の分析手法

 ①業界内の競争状況
  ・ハーフィンダル=ハーシュマン指数(HHI)
   ・業界内の各企業シェアの2乗を合計:HHIの値が大きいほど市場集中度(寡占度)は高い
   ・サンクコストが大きいなど、撤退障壁が高いと業界内の競争状況に影響する

 ②新規参入の脅威
  ・相関性の高い要因としては「参入障壁」がある
    ・規模の経済
    ・製品差別化の度合い 
    ・既存企業のブランド力
    ・政府による規制

 ③代替製品の脅威
 ④売り手の交渉力
 ⑤買い手の交渉力

2.バリュー・チェーン分析
 自社能力の内部分析手法で、個々の活動以上の成果を生み出す全体最適を志向する考え方です。

3.3つの基本戦略
 ポーターは、企業が外部環境の変化に適応し、自社の競争優位を活かすための基本的な競争戦略として、3つの基本戦略を示しました。  

①コスト・リーダーシップ戦略
  ・競合他社より低いコストを優位性として競合と同じ品質の製品やサービスを低価格で提供
  ・こうした企業の戦略的課題は、市場シェアのさらなる拡大
  ・マーケティング面では、チャネル戦略やプロモーション戦略に注力
  [リスク]
  ・革新的な技術を持った競合企業が出現する
  ・資金力で業界の既存企業を大幅に上回る企業が新規参入してくる
  ・顧客ニーズが多様化して単一の製品では対応できなくなって
   差別化戦略をとる企業に対抗できなくなる

 近年では、コスト・リーダーシップ戦略を採る企業であっても、デザインや品質などの面で、以下に挙げる差別化戦略の要素も同時に追求することが課題になっています。

②差別化戦略
 製品自体のデザインや機能、流通チャネルなどの独自性を活かし、他社から容易に模倣されない製品やしくみを作り上げることで、競争優位を確立・維持する戦略です。

③集中戦略
 ニッチ戦略とも呼ばれ、コストもしくは独自性を追求するために、特定の市場や限られた顧客セグメントに経営資源を集中する戦略です。低コストを活かす「コスト集中」と、独自性を活かす「差別化集中」に細分化されることもあります。


成功例)KFCのフライドチキン、しまむらの郊外型主婦層、スズキの軽自動車
失敗例)シャープの液晶テレビ

競争地位別の戦略パターン
 自社が業界内でどのようなポジションにあるかによって、事業戦略の定石が変わってくるという考え方があります。コトラーは、相対的な市場シェアに応じて、業界におけるポジションをリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー、という4つの競争地位に分け、それぞれの戦略に応じた戦略の定石について論じています。

[出所]嶋口充輝著『統合マーケティング』(日本経済新聞社)

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