マーケティング_価格戦略について
マーケティングについては、ここまでマーケティング・ミックスの製品戦略まで整理してきました。
今回は、マーケティング・ミックスにおける『価格戦略』について整理していきたいと思います。
マーケティング・ミックスの『製品戦略』についてはこちら
価格戦略
価格は、マーケティング・ミックスの一要素として位置づけられますが、他の要素(製品、チャネル、プロモーション)と比べて販売数量、売上、利益に直結するという特徴があります。そのため、長い時間がかかる製品開発やチャネル開拓などと比べて、価格戦略によって短期的に売上を増大させることが可能です。
企業の価格戦略は以下のような外的・内的要因の影響を受けます。
(外的要件)
①市場経済の需要と供給:原油・穀物
②競合他社製品の価格:ビールや清涼飲料
③消費者・顧客の知覚価値(価格感度):スーパーや外食チェーン
(内的要件)
④製造や販売にかかるコスト
⑤目標とする販売数量や売上・利益額
価格形成に影響を与える要因としては、以下3点があります。
顧客志向的
競争志向的
費用志向的
■価格・販売数量と利益の関係
価格は、以下の数式のように、販売数量やコストと並んで、利益を決定する3つの要素を構成しています。
総利益=(価格×販売数量)-コスト
■価格と消費者心理
(1)顧客にとっての価格の意味
知覚価値と受容価値の差が大きい程、顧客はお買い得感を得る
(2)価格-品質効果
・価格は「品質を測るバロメーター」として捉えている
・「これくらいの価格なら、この程度の品質は維持しているだろう」と思っている
・知覚品質
・威光価格:著名なブランド品のように、消費者が「価格が高いから、同然品質も良いはずだ」と考える価格
(3)参照価格
消費者が購買行動にあたって基準とする価格のこと
消費者は、絶対的な基準によるのではなく、何らかの比較対象との対比
①内的参照価格:消費者の過去の経験などから形成される参照価格
②外的参照価格:競合製品の価格、POP提示価格
・順応水準理論
・同化対比理論
L顧客の相応しい価格は、一定の「範囲」を持っている
LPSM分析:需要可能な価格帯を明らかにするアプローチ
(4)プロスペクト理論
プロスペクト理論は、企業の価格戦略にいくつかの示唆を与えてくれます。
たとえば、需要を刺激しようとして一時的に価格を下げると、消費者の内的参照価格が低下後の価格にリセットされます。そうなると、再び価格を上げたとき、それが元の価格への回帰であっても、消費者にとっての効用の低下は大きく、売上を十分に回復できないことが考えられます。
(5)需要の価格弾力性
価格の変化に対して、どれだけ需要が増減するかを示す指標
・絶対値
・1より大きい 弾力的
・1より小さい 非弾力的
需要の価格弾力性が大きい製品やサービスは、低価格化が販売数量の増加に結び付きやすく、需要の価格弾力性が小さい製品やサービスは、低価格化が必ずしも販売数量の増加に結びつくとは限りません。
企業が価格の引き下げを行う際に、売上を増加できるかの判断基準
企業が価格を引き上げる場合に、どれだけ販売数量、売上が減るかを検討する判断基準
(6)需要の交差弾力性
ある製品Aの価格変化に対して、他の製品Bの需要量がどれだけ変化するかを表す
代替関係
補完関係
①交差弾力性がプラス代替関係(競合関係) ②交差弾力性がマイナス補完関係
③交差弾力性が0_独立した関係
■企業による価格決定
価格決定のプロセス
・コスト志向の価格決定プロセス
・市場志向の価格決定プロセス
・顧客志向的
・競争志向的
顧客志向的な価格決定方法
①PSM分析:顧客に対して以下4項目の質問をし、その結果を分析する手法
①安すぎて買わない
②安いので買う
③高いと思うが買う
④高すぎて買わない
上記分析の結果、④下限価格と①上限価格の間が、顧客にとっての需要可能な価格の範囲になります。さらに、「安すぎて買わない」グラフと「高すぎて買わない」グラフが交わる点は、顧客にとっての理想価格とされています。上記の理想価格と妥協価格の間で価格設定することが、顧客の知覚だけからすれば適正であるといえます。
しかし、実際の価格決定には、競合製品の価格と比べて著しい差がないか、その価格帯でコストカバーできるかといった競争志向的な観点や費用志向的な観点も必要になります。
②多属性アプローチによる価格決定
③顧客心理や需要に関連した価格設定
・端数価格:1,980円
・名声価格:ブランド品
・慣習価格:豆腐、自販機
・ダイナミック・プライシング
・サブスクリプション
競争志向的な価格決定方法
①実勢価格決定法
・プライスリーダー
②市価以上価格
・競合製品より高い価格
③市価以下価格
・競合製品より低い価格
・エブリデイロープライス
費用志向的な価格決定方法
①コストプラス法:一定の利益を上乗せ
②マークアップ法:値入率を上乗せ
③目標収益法:損益分岐点分析計算の手法を利用
その他の価格決定方法
①新製品導入時の価格設定
高価格:上澄み吸収価格(スキミング・プライシング)
低価格:市場浸透価格(ペネトレーション・プライシング)
②製品ライン全体を考慮した価格設定
・抱き合わせ価格:宿泊費と交通費
・キャプティブ価格:カミソリ本体と替え刃
・プライスライニング:お歳暮
③さまざまな割引価格
・現金割引
・数量割引
・機能割引
・季節割引
・アローワンス:協賛金、販売奨励金、販売促進金