経営戦略について③_経営資源の配分
前回では、全社戦略(企業戦略)の成長戦略について書きました。今回は、全社戦略の経営資源の配分について、整理していきたいと思います。

前回(経営戦略について②_成長戦略について)はこちらから
■経営資源の配分
前回記載したように、アンゾフの「製品-市場マトリックス」を用いたり、M&Aやアライアンスの可能性を模索するなど、成長戦略の代替案を検討することによって、企業はミッションやビジョンなどの達成をより具体的な戦略として描くことができます。
しかし、戦略は絵を描いただけではなく実行して初めて価値を生み出します。戦略を実行・遂行するためにはヒト・モノ・カネ・情報という経営資源の調達と配分が必要になります。
経営資源の中でも特に全社的な資金の配分を事業・製品ごとに導き出す手法としてよく知られている『PPM』について、整理したいと思います。
PPM:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント
PPMは、将来の予測市場成長率と相対的市場シェアという2つの軸を使って描かれるマトリックスを用い、自社の事業・製品ごとのポジションを明確にし、資金がどこから創出され、どの事業・製品に投資すべきかについて、経営者に意思決定の基準を提供する手法です。
PPMの根拠となっているのは、「経験効果」と「製品ライフサイクル理論」という2つの考え方です。
経験効果の要旨は、「製品の累積生産量が倍加するごとに、単位当たりのコストが 20~30%程度逓減する」というものです。
経験効果がはたらくとすれば、市場シェアを大きくした企業は、累積の生産量を他社に先んじて多くすることができるため、他社より低コストで生産し、低価格製品を市場に提供することができることになります。
経験効果は、次のような様々な要因がもたらす相乗効果があると考えられています。
①習熟効果
②作業遂行上の最適な資源の組み合わせ
③学習した知識の蓄積によって可能となる効率化
なお、経験効果は「規模の経済」と似ていますが、「規模の経済」は、大規模設備を持つ大企業にしか追求できません。一方、経験効果は、累積の生産量の増加によるものなので、その効果を享受できるのは大企業に限りません。
経験効果
製品ライフサイクル理論とは、企業が提供する製品やサービスにも人間の一生と同じように以下4つのライフステージがあるという考え方です。
導入期
成長期
成熟期
衰退期
PPMマトリックスを作成すると、相対的市場シェアの高低と市場成長率の高低によって、事業や製品が4つの戦略グループに分類されます。これら4つのグループはそれぞれ「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」と呼ばれます。
製品ライフサイクルの考え方とキャッシュの流れを考慮すると、現在の「金のなる木」が生み出すキャッシュを有望な問題児や花形に投資することによって、問題児は花形に成長し、花形は将来大きなキャッシュを生み出す金のなる木になる、という循環を生むことができます。