「直感的アイデア」と「論理的思考」の関係性

先日、あるメンバーからある提案を受けたのですが、「当部の組織課題に対してその提案がどのような効果があるのか」という説得力が弱いということで差し戻しました。

その際、そのメンバーから言われたのが、「いつも組織課題や経営課題に対してどのような成果を出せるのかとおっしゃいますが、そのような論理的思考やロジック、合理性に偏っていていいのでしょうか?私が提案した内容は、直感的なアイデアに留まっているかもしれませんが、施策として自信を持っています。合理性だけで却下してしまっていいのでしょうか?」という趣旨の意見でした。

どうもそのメンバーは、「論理的思考、ロジック、合理性」と「直感的な提案、施策」は別のもので、後者についても見つめるべきではないかと考えているようでしたが、大きな誤解をしていると思うのです。

直感で降りてくるアイデアは重要だと思います。企画をするとき、担当者の「ピン」ときたアイデアが出発点になることは少なくありません。ただそのアイデアを他者に伝える土台として、論理的思考やロジック、合理性などがあるという点を理解していないために、上記のような主張に至ってしまうのではないかと考えました。

以前、イギリスのケンブリッジで語学留学をしている時に、ケンブリッジ大学で鉱物学の研究をしている日本人の方と仲良くなり、ご自宅に招待して頂いたことがありました。

ケンブリッジ大学では、成功すればノーベル賞ものという高度な研究をしている人が多いなど興味深いお話をたくさん伺ったのですが、その中で、電線の抵抗をゼロにする研究をしている人がいるというお話をして下さいました。現在は、発電所から家庭等まで電線を伝って電気が運ばれていますが、電線には抵抗があるので、家庭等には運ばれてくる頃には発電所当初の数分の1の電力になってしまいます。

その抵抗を0にする技術があれば、発電所で発生した電力が減ることなくなるため、大幅なイノベーションを図ることができます。

そんな楽しいお話を伺っている中で、印象残っているのが「自分もそうなのだが、悩みに悩んだけど解決法が出てこないときがある。そんな苦しみの後、ふとした瞬間にアイデアが降りてくることがあるんだよ」というお話でした。

人事を尽くして考えに考えるというプロセスを経た後に、ふとした瞬間に解決につながるアイデアが降りてくるということがあったということです。

これに似た説明として、細谷功氏の著書『アナロジー思考』では以下のように書かれています。

仕事上のアイデアに困っているときや何らかの壁にぶち当たっているときなどに「偶然」何かを見て考えがひらめくということがあるが、それは必ずしも「偶然」ではないことが理解できるだろう。発想力を豊かにするには、一度徹底的に悩んだ状態を作っておくのも次の「偶然のひらめき」を生み出す上で重要なことだといえる。

そして直感として生み出されたアイデアを扱う次のステップとして、「他者に説明し、理解してもらう」ことが求められると思います。特にビジネスパーソンなどは上司や経営層にそのアイデアを有効な戦略又は施策等として提案することが必要です。そこで求められるのが論理的思考やロジックということになります。

松永エリック・匡史氏の著書『Artist Thinking』では、理論と創造性、その成果を建造物に模して以下のように表現しています。

理論は土台、創造性は設計図、できあがったアートが建物

生まれてきたアイデアは、理論という土台で着工し、創造性という設計図で可視化し、できあがった企画書が建物となるといえると思います。

つまり、直感、アイデアと論理的思考、ロジカルは、別々のものではなく、具現化するために一体的に必要になってくるものと言えることができるでしょう。

そのことについて、理解してもらうために努力していきたいと思っています。


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