経済産業省DX推進施策2025|DX銘柄・DX認定について

経済産業省のDX推進施策は、日本企業のデジタル変革を支援する包括的な制度です。日本経済のデジタル変革を牽引する経済産業省のDX推進施策は、企業の競争力強化と持続的成長を実現するための包括的なフレームワークとして注目を集めています。2020年から開始された「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」制度は、優れたDX実践企業を選定し、日本全体のデジタル変革を加速させる重要な役割を果たしています。
経済産業省DX推進施策の全体像
デジタルガバナンス・コードの基盤
経済産業省のDX推進施策は、「デジタルガバナンス・コード」を基軸として展開されています。この制度は企業がデジタル技術を活用して新たな成長と競争力強化を実現するための指針を示しており、単なる技術導入にとどまらず、ビジネスモデルの抜本的変革を目指しています。経済産業省DX推進施策
2024年には「デジタルガバナンス・コード3.0」として更新され、データ活用の要素が明示的に含まれるなど、時代の変化に対応した内容となっています。これにより、企業のDX戦略により具体的で実効性のある指標が設けられました。
DX認定制度からDX銘柄への体系的アプローチ
経済産業省のDX推進施策は、段階的な支援体系を構築しています。まず「DX認定制度」により基本的なDX推進体制を評価し、その上で上場企業を対象とした「DX銘柄」選定によって優秀企業を表彰する仕組みです。この二層構造により、幅広い企業のDX推進を促進しながら、先進企業の取り組みを可視化しています。

DX認定制度:DX銘柄への第一歩
DX認定制度の意義と要件
DX認定制度は、情報処理の促進に関する法律に基づき、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。この認定は上場企業がDX銘柄に応募する際の必須条件となっており、企業のDX推進における重要なマイルストーンとなっています。DX認定制度詳細
DX認定制度の認定事業者に対するアンケートでは、96%の認定事業者がDX戦略の推進に効果があったと考えており、その他、人材の育成・確保でも74%の認定事業者が、良い効果があったと実感しています


DX認定申請のプロセスと準備
DX認定の申請は、2025年8月からウェブフォームによる申請に移行し、より利便性が向上しました。申請プロセスは以下の流れで進行します。
まず、申請ガイダンスの確認から始まり、認定申請書と申請チェックシートの準備を行います。これらの書類には、企業のDXビジョン、戦略、組織体制、成果指標などを具体的に記載する必要があります。標準審査期間は約60営業日となっており、認定の有効期間は2年間です。
DX認定事業者への支援措置
DX認定を取得した企業には、以下の主要な支援措置が提供されます。
・ロゴマークの使用権 では、認定事業者が自社のDX推進を対外的にアピールできる公式ロゴマークの使用が可能になります。このロゴマークはDXのスタートラインに立つ企業をイメージしたデザインとなっており、ブランディング効果が期待できます。
・金融支援措置 として、日本政策金融公庫による金利優遇が受けられます。DX認定を受けた中小企業者の設備投資等に必要な資金について、基準利率よりも低い特別利率での融資が可能となります。また、中小企業信用保険法の特例により、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大も受けられます。
・人材育成支援 として、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)により、高度デジタル人材訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部等について助成を受けることができます。
・DX銘柄等への応募資格 として、上場企業の場合はDX銘柄への応募が可能となり、中堅・中小企業等ではDXセレクションへの自薦での応募が可能となります。
DX銘柄2025制度の詳細分析
DX銘柄2025の選定プロセス
DX銘柄2025の選定は厳格な三段階のプロセスを経て実施されました。まず、東京証券取引所上場企業約3,800社を対象とした「DX調査」が実施され、311社が回答しました。この中から上場かつDX認定を取得している企業が選定対象となります。
一次評価 では、アンケート調査の選択式項目とROE・PBRに基づくスコアリングが実施されました。この段階では定量的な指標を中心として、一定基準以上の企業が候補企業として選定されました。
二次評価及び最終評価 では、一次評価で選定された候補企業を対象に、アンケート調査の「記述回答(DX実現能力、ステークホルダーとの対話、企業価値貢献)」について、DX銘柄評価委員が評価を実施。当該結果を基に、DX銘柄評価委員会による最終審査を実施し、業種ごとに優れた企業を「DX銘柄2025」として選定されています。

評価項目とデジタルガバナンス・コードの対応
DX銘柄の評価項目は、デジタルガバナンス・コードに対応した体系的な構成となっています。
経済産業省では、2024年6月に「企業価値向上に向けたデジタル・ガバナンス検討会」を開催し、同検討会の議論の結果を踏まえ、改訂版の「デジタルガバナンス・コード3.0」を公表しました。
「DX銘柄」の選定にあたっては、「DX認定」の取得を条件としており、デジタルガバナンス・コード3.0に紐づく「DX認定」と「DX銘柄」の有機的な連動を図っています。
経営戦略におけるDXの位置づけ
DX銘柄2025では、DXが経営戦略の中核に位置づけられているかが最重要の判断基準です。単なるIT投資ではなく、ビジネスモデルそのものの根本的な変革を実現する戦略的取り組みが必要です。
2025年版の新評価軸として「既存事業とDXの高度な融合」が特に重視され、新規事業立ち上げよりも既存の主力事業をDXで進化させている点が評価されています。また、業界への波及効果も新たな評価ポイントとなり、自社のDX成果が他社や業界全体に好影響を与える取り組みが高く評価されています。
組織体制とガバナンス構築
CDXO(Chief Digital Transformation Officer)の設置や明確な権限を持つDX推進責任者の任命が必須となっています。推進体制のベストプラクティスとして、経営トップ→CDXO→DX推進室→各事業部門のDXリーダーという階層構造が評価されています。
専門部署の設置と横断的組織の構築により、部門の壁を越えたDXプロジェクトチーム編成が重要です。ガバナンス面では、取締役会レベルでのDX議論とCSIRT設置などのサイバーセキュリティ対策が評価対象となります。
人材戦略とデジタル人材育成
社内人材基盤の体系的整備が新たな評価強化ポイントとなり、以下の体系的アプローチが評価されています:
- 経営層向けデジタル研修: 最新技術動向と経営戦略への活用法
- 中間管理職向けDXリーダーシップ研修: 組織変革とプロジェクト推進
- 現場社員向けツール活用研修: 日常業務でのデジタルツール活用
特に経営層については、生成AI・先端技術への理解と事業戦略への活用能力が問われます。専門人材の配置では、データサイエンティスト、AIエンジニア、セキュリティ専門家などの高度専門人材の確保が重要です。
ITシステムの現代化とデータ活用基盤
レガシーシステムの刷新とクラウドベースの柔軟なアーキテクチャへの移行が求められます。生成AI・先端技術の積極活用が2025年版の新トレンドとなり、以下が高く評価されています:
- 業務自動化: チャットボット、自動コード生成
- 意思決定支援: AI需要予測、リスク分析
- 創造性向上: 生成AI活用の新商品開発
データ活用基盤では、全社データの統合、リアルタイム分析体制、データドリブンな意思決定プロセスの構築が審査されます。
KPI設定と成果の可視化
企業価値向上との関連性が明確で、ステークホルダーへの透明性ある開示が必要です。2025年版で重視される成果指標:
- 社会価値創出指標: CO2削減量、社会課題解決への貢献度
- 持続可能性指標: ESG評価向上、長期的競争力強化
- イノベーション指標: 新規事業収益貢献度、特許出願数
- 組織変革指標: デジタルスキル向上度、組織変革速度
短期的な効率改善指標だけでなく、中長期的な競争力強化や新価値創造に関する多面的な評価指標設定が求められます。特に段階的導入、定量的KPI設定、継続的モニタリングによるROI向上が評価されています。
DX銘柄2025の最新動向
DXグランプリ企業とDXプラチナ企業
DX銘柄制度では、特に優秀な企業をDXグランプリ企業として表彰しています。2025年にはSGホールディングス、ソフトバンクの2社が選定され、これらの企業は業界をリードする革新的なDX取り組みを実現しています。
DXプラチナ企業制度では、3年連続でDX銘柄に選定され、かつ過去にDXグランプリを受賞した企業が対象となります。この制度は、継続的で卓越したDX推進を評価するものであり、日本のデジタル変革を先導する企業として位置づけられています。

まとめ:DX銘柄取得への戦略的ロードマップ
企業がDX銘柄を目指すことは、単なる表彰の獲得ではなく、デジタル時代における持続的な競争優位性の確立と社会価値創造を同時に実現する戦略的投資です。DXグランプリ企業となったソフトバンクやSGホールディングスが示すように、既存事業の強みを活かしながら業界の枠を超えた価値創造を実現することが、真のDX成功の鍵となります。
今後も進化し続けるDX推進施策を活用し、持続可能で社会に貢献するデジタル変革を実現する企業が、日本経済の未来を切り開いていくことでしょう。