グーグルから読み解くリーダーシップ②
前回まとめたグーグル人事担当副社長のラズロ・ボック著書の「WORK RULES!」ついて、今回は、後半をサマリーにしてまとめたいと思います。
前回の内容はこちら
■業績評価のために
目標を設定すると業績が良くなると、ラズロ・ボック氏は言っています。グーグルで有名な『OKR』は、達成可能かどうかという尺度ではなく、チャレンジ目標を設定して、四半期などの短いサイクルで達成度合いを測っていくという手法です。
実際の評価は、OKRによる目標を達成したかどうかは参考にはされますが、それによって評価が決まる訳ではありません。
グーグルには、以下の5段階評価を利用しているそうです。平均点となる3が、「期待を上回る」になっている点が、イノベーションを常とする企業らしさを表していると思います。
・Google の5段階評価
1.改善を要す
2.つねに期待通り
3.期待を上回る
4.期待を大きく上回る
5.最高
ラズロ氏は、評価調整(キャリブレーション)の重要性にも触れています。評価調整のプロセスを経ることによって、評価者は、他マネジャーに評価の正当性を説明することが求められます。これによって、組織内の評価に対する目線が合ってくることが期待されます。
また、組織間での評価調整を実施しているという事実は、社員も「きちんと評価している」という安心感や公平感を感じることでしょう。
・キャリブレーションによってバイアスが減じるのは、マネジャーが自分の決定の正当性を互いに説明しなければならないからだ
・社員間で公平さを維持しようとする意識も高まる
評価をする上で重要な事柄として、ラズロ氏は「業績評価」と「人材育成」を結びつけないことの重要性を説明しています。要は、評価と報酬を同時に議論しないということです。
一般的に、評価と報酬(昇給・昇格や賞与)と結びついていることが多いと思いますので、議論を全く別テーブルにすることは難しい企業が多いのではないでしょうか。
ただ、議論を社員の評価(どのようなプロセス・行動を経て実績を出せたか)にテーマをすることによって、社員の賞賛すべき点や今後期待する点が明確になってきます。これらの点を本人にフィードバックをすることによって成長を促すというサイクルを回すことを評価者に理解してもらい、運営していくことが重要です。
・業績評価と人材育成を結びつけない
L2つの議論を決して同時にしないこと(評価と報酬)
L社員に成長してほしいと願うなら、これらの2つの議論を同時にしてはならない
昇進について、グーグルは自薦による推薦ができる制度だそうです。日本企業の場合、上司や会社幹部が決定する場合が多いと思いますが、本人のやる気というのも本来重要な要素ですので、今後検討しても面白い制度だと思います。
グーグルの統計によると、女性は上司がちょっと後押ししてあげることによって、マネジャーなど昇進に行動しやすくなるそうです。国別の違いなどもあるかもしれませんが、念頭に置いておいてもいいかもしれません。
その他にも、グーグルでは昇進に関する統計データの可視化を進めているそうです。そのようなデータを可視化し社員に公開することによって、制度のブラックボックス化が解消されますし、改善点も見えやすくなるメリットがあります。人事データ分析は、今後ますます発展していく可能性があります。
・自薦を入れている
・女性はちょっと後押ししてあげる
・昇進統計データを可視化している
■2本のテール(ネガ/ポジ)を管理するために
評価を正規分布化すると、ネガ(評価が悪い層)のテールとポジ(評価が良い層)のテールが2本あるのが一般的です。
グーグルでは、ネガのテールに関しては、「手を差し伸べる」というスタンスを取っています。具体的には、調査やチェックリストを使って真実をあぶり出し、改善するように社員とコミュニケーションしていくそうです。
なぜ、そのような対応をするかというと、ネガテール層は、「能力がないのではなく、役割がうまくはまっていないから」という考え方に基づいています。
日本企業でも、その社員の適性や強みを理解してあげて、活躍できるような機会を提供してあげることは重要です。
・ガウス(正規)分布
Lボトムテール社員(5%)には率直に話す
■学習する組織を築こう
心理学者のK・アンダース・エリクソン教授によると、ある分野で専門家になるためには「1万時間」の練習が必要だそうです。その練習も「学習するスキルを細かい要素に分けて具体的なフィードバックを即座に返す」ことが効果的であるということです(デリバレイト・プラクティス)。
会社での学習の70%は業務での経験を振り返り、気づきを得ることで次に活かしていくというサイクルにて得られると言われています。デリバレイト・プラクティスと組み合わせることで、効果的な学習ができるように実践していきたいものです。
・1万時間の法則_K・アンダース・エリクソン教授(心理学)
Lある分野で専門家になるためには1万時間の練習が必要とされる
・デリバレイト・プラクティス
L似たような小さなタスクを繰り返し、即座にフィードバックや修正・実験を加える練習方法
L動作を細かく分割して何回も繰り返す
L組織やチームの学習効率を上げる方法の一つは、学習するスキルを細かい要素に分けて 、具体的なフィードバックを即座に返すこと
・経験学習サイクル
会社での学習
70% 業務
20% コーチングやメンター
10% 座学
・社内最高の専門家に講師になってもらう
・マインドフルネス
・社内で自分の得意分野を教え合う_G2G
L専門的なもの
L純粋な娯楽
L教えることで洗練し、目的意識が生まれる
■報酬は不公平でいい
一般的に、企業は人事制度によって評価や報酬が定められていますが、大体の社員がある程度納得できる範囲の設定にしていることが多いと思います。
人事を担当していると思うのが、突出した成果を出した社員に対する処遇に制限(制度上の最高点しか与えられないことが多いため)がかかってしまう場合があるという点です。そのような社員はもっと評価・報酬面で優遇できるような組織文化を醸成したいと思いました。
・最も優秀な社員に平均的な社員の10倍の価値があるなら、「不公平な」報酬を払うべき
・めざましい実績に報いるときは、現金だけでなく「経験」をもたらす報酬を払うべきだ
■WORK RULES!
この本の要約を箇条書きでまとめると、以下のようになります。個人的には「やっぱり(自分の方向性は)間違っていなかったんだ!」という感動や、今後の道しるべとすることができました。
- 仕事に意味をもたせる
- 人を信用する
- 自分より優秀な人だけを採用する
- 発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない
- 2本のテール」に注目する
- L悪戦苦闘している大半の人は、本人が無能だからではなく、間違った役割を与えられているせいだ。
- カネを使うべきときは惜しみなく使う
- L最も人間的な瞬間に手を差し伸べることは、会社が社員ひとりひとりを気にかけていることを強調する
- 報酬は不公平に払う
- Lべき分布
- Lチームが創出する価値の90%以上は、最も優秀な10%の才能がもたらす
- ナッジ、きっかけづくり
- L人は貯蓄に回す金額収入に占める割合を変えたがらない。ほんの少し上乗せしよう
- 高まる期待をマネジメントする
- 楽しもう! ※一番上に戻る