『MBO』と『目標管理』について

■MBO・OKR・KPI・目標管理の違いは何か

MBOマネジメントの哲学(ものの見方・考え方)ですが、OKRはMBOを実践するための手法です。

その手法とは、共通の目的に「主要な結果指標(Key Results)」をセットすることです。それによって、定量化によった誤った方向づけというMBOに起きがちな問題を解消します。

OKRでは、目標に主要な結果指標をセットしましたが、KPIでは鍵となる先行指標を1つ決めます。例えば、「商品を70件以上紹介する」などです。

事業に関わっている組織の全員で、1つのKPIを追いかけ、「信号」のように進むか止まるかを判断します。誰が見てもはっきりわかる客観的な指標が組織の力を1つの方向へと集約してくれます。

日本では、MBOが「目標管理」として1960年代に導入が始まり、住友金属鉱山の猿谷雅治元常務らによって促進されていきます。

1990年代にはバブル経済が崩壊し、企業はコストカットせざるを得ない状況になりその方策として成果主義的な人事評価・報酬制度が導入されていきます。

そこに「目標管理」が賃金決定の根拠として組み入れられてしまったのです。

そのため日本における目標管理は、MBOのマネジメント哲学に反して人事評価・報酬制度の意味合いを強く持っています

これがMBOに対する多くの誤解、「自律・自立」という言葉が課題となっている理由、そして、近年見られるOKR・KPIなどの手法へ期待が集まっていることの背景です。

坪谷邦生 『図解』目標管理入門 を元に著者作成

ドラッカーは「間違った方向づけをもたらす大きな要因が、報酬システムである」と警鐘を鳴らしていたとおり、報酬システムとして社員に間違った方向づけをしてしまう危険をはらんでいるのが、現状の目標管理です。

■哲学としてのMBOを取り戻す

ドラッカーが提唱したMBOとは、マネジメント哲学(philosophy)、つまり「ものの見方・考え方」でした。

日本企業も、今一度「人事評価や報酬制度の一部」という色眼鏡を外す必要があります。

また、ドラッカーは以下のように言っています。

組織が必要としているものは、個の強みと責任を全開し、全員のビジョンと活動を共通の目的に向けて方向づけ、チームワークを実現し、個の目標と共同の利益を調和させるマネジメントの原則である。

上記より。個の主観(ビジョン)と客観(強み)、そして組織の主観(共通の目的)と客観(共同の利益)を目標設定によって統合し、スパイラルアップさせることがMBOだと解釈できるのです。

もちろん完全な統合はあり得ませんが、不完全であっても全体性を持って進むことが重要です。

坪谷邦生 『図解』目標管理入門 を元に著者作成

■目的は「自由」の獲得

MBOによって得られるのは「自由」だとドラッカーは述べています。

組織を『目的意識と責任』をもって利用することである。この責任とそこに伴う意思決定から逃げるならば、組織が主人となる。逆にこの責任を引き受けるならばわれわれが自由となり主人となる。

組織に使われるのではなく、組織を使いこなす。そのような自由を手に入れるためにMBOを活用していきましょう。


クリックありがとうございます。
-------------------------------------
にほんブログ村 経営ブログへ

にほんブログ村 士業ブログへ



-------------------------------------