人事制度上の「管理職」と法的な「管理監督者」

人事制度における資格・等級において、管理職に該当する資格・等級を設定する際には、労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうか、という点も重要です。

■人事制度上の「管理職」と法的な「管理監督者」

法的な「管理監督者」への該当性としては、以下が挙げられます。

①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
 ・部下に関する採用、解雇、評価等について、第一次的にも決定する権限が与えられている
 ・部下と同様の現場作業・業務に従事する時間が短い
②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
③一般の社員と比較して、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること

中間管理職の中でも「課長」については、法的な管理監督者かどうかが問われてくる場合がありますが、上記①-③を充足した権限と責任を持つ役割を与えることが必要です。

また、給与面でよく問題になるのが、残業代による非管理職との給与額の逆転現象(管理職よりも残業代が支給された非管理職の方が給与が高い状態)です。

社員の中で平均的な残業時間数であった者が、管理職登用によって給与が減少するような制度は避けるべきですし、むしろ、多くの社員において、残業代が支給されなくなったとしても給与が増額となるような制度を設定することが妥当と言えます。

非管理職の資格・等級と管理職の資格・等級との間で給与レンジに階差をつけるとともに、管理職には役職手当を支給することで、管理職の給与が、非管理職よりも安定的に高い水準であるような給与設計が求められます。

■部下を持たない「スタッフ管理職」の考え方

「課長」や「部長」のような部下を持たないスタッフ管理職という役割も増えてきています。例えば、医師や弁護士などの資格とスキルを持つ社員が該当する高度専門職制度などがあります。

行政解釈によると、以下の要件に当てはまれば、管理監督者に該当すると考えられているようです。

①ラインの管理監督者と企業内において同格以上に位置付けられている者
②経営上の重要な事項に関する企画、立案、調査等の業務を担当する者

なお、部下を持たない役割になるため、労務管理に関する指揮監督権限は除かれます。

管理監督者の要件として、「労働時間についての裁量権」がありますが、長時間残業の抑止や安全衛生上の観点から、管理監督者であっても、出退勤時刻の把握は義務づけられていると言ってもいいでしょう。「労働時間についての裁量権」との整合性としては、以下のような考え方となっています。

①勤怠管理ツールへの打刻を求めるだけで、出退勤をはじめとする労働時間の裁量が否定されることはない
②遅刻/早退の届出要請は、会社把握のためとして考えられ、賃金控除もないのであれば、否定されない

人事制度で資格や等級を設計する際には、管理職となる資格・等級が、上記のように法的な「管理監督者」に適合しているかをきちんと確認することが必要です。


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