ピープルアナリティクスを誰が運用するのか

 ピープルアナリティクスの実務において、多くの企業で最初に直面するのが、「誰が進めていくのか」です。

ピープルアナリティクス関連の調査では、人材データ分析・活用に対する関心は年々高まっているものの、関心度合いに比して実際に取り組んでいる企業は少ないという結果がでています。

「何ができるかわからない」
「どの程度使えるか分からない」と様子見している企業が多いのです。

その要因の1つに「人事部にわかっている人がいない、やれる人がいない」という状況があります。そこを踏まえて、運用をどのように進めていくべきかを説明したいと思います。

1.人事担当者の育成

 人材データの多くは、年・半年・月に1回程度更新される静的なデータが多いと思います。PythonやRなどのプログラミング言語や専門ツールさえ使えれば比較的容易に扱うことができます。そこまで人材データ分析・活用が進んでいない企業では、ExcelやAccessなどの汎用ツールを活用するだけで、何かしらの付加価値を創出できる可能性があります。

 したがって、人事に精通した人材のうち、学生時代にSPSSなどを使って統計解析を少しかじっていた人や、HRテクノロジーに関心の高い人であれば担い手としてのポテンシャルはあるといえます。

こうした人材をピックアップして、多少時間をかけながら人材データ分析の専門家を内製で育成していければベストです。

 実際に、人材データ分析・活用の先進企業では、勘と経験に基づく人事のあり方に問題意識を抱いた人事部門の担当者が自身でデータ分析手法を身につけて、何かしらの成果を出して社内で認知され、データドリブンの人事に転換していく、といった経緯を辿っていることが多いのです。

 ただし、実際には難しいことも多いので、他部門や外部の専門人材の強力を得ることも視野に入れることが必要です。

2.他部門からの獲得

マーケティング領域では、世の中においてすでに分析ノウハウが蓄積されているうえ、社内人材に目を転じてみても、人事部門より分析に長けた人材が多く存在しているのが一般的です。そのような他部門の専門人材を活用することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。

①データ分析のPDCAサイクルの実践

 データ分析で陥りやすいのはが、「分析のための分析」です。つまりいろいろ分析してみたけど次のアクションがなかなか見えない状況になってしまうという状態です。こうした状況に陥るのは分析スキルももちろんですが、むしろ分析のPDCAサイクルを回すということが習慣づいていないことに起因することが多いです。

 したがって、仮に人事領域に詳しくないとしても、こうしたサイクルを回すことが身についている人材が1人加わるだけで、「分析のための分析」から「意味のある分析」に転じるきっかけとなり得ます。

②現場の巻き込み

 現場での分析に慣れた人材だと、物理的な負荷を軽減するような依頼をしたり、データ取得に対してうまく理由付けすることで精神的な負荷を軽減し、結果的に協力を取り付けることができます。

3.他部門の人材に活躍してもらうためには

 人事データはビッグデータといえるほどの情報量ではないので、先進的な分析を好むタイプの専門家にとっては、物足りなさや歯ごたえのなさを感じやすいです。

 さらに、難しい分析が必ずしも意味のある結果につながるとは限らず、データの可視化だけでも十分な価値をもたらすこともあります。すると、その程度しか期待されていなければ、自分でなくてもできるのでは、と思われてしまう可能性があります。

 したがって、他部門の人材が人事部門で活躍するための要件は、スキルの高さを追求しすぎるのではなく、『人に興味があるか』や『データ分析未到達の領域を扱うことに興味があるか』といった点を人材要件に加えることが効果的です。

 また、社内における説得力を発揮するためには、オーナーシップはあくまでの人事部門の担当者が負い、その支援の下で
データ分析の専門家が動くという構図が最も現実的で効果的
です。

4.外部リソースの利用

 最初の一歩としては、まずは外部リソースを活用してスモールスタートという選択肢は悪くありません。活用の可能性があるのが、統計やデータ分析のスキルを有する学生です。人事担当者がきちんとリードさえすれば、一定のアウトプットは期待できます。


  


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