人材開発・組織開発について②_「科学知」と「臨床知」
前回に引き続き、書籍『人材開発・組織開発コンサルティング』より、胸に刺さったポイントを整理していきたいと思います。
前回の内容はこちら↓
■「科学知」と「臨床知」を組み合わせる
神戸大学名誉教授の金井壽宏氏によると、「組織には合理で説明できる部分もあるが、非合理な部分も存在する。非合理が7、合理が3くらいだろう」と述べられています。
要するに、人や組織の現象については、合理的に説明ができて解決可能なのは、3割ほどと考えたほうがよい、ということになります。
3割という数字をどのように捉えるかによりますが、ポジティブに捉えれば「科学知が3割の手助けをしてくれるなら、大失敗や痛恨のエラーを避けることができる」と考えることができます。
また科学知は、客観的な説明をすることはできるかもしれませんが、「自分がこの状況で、クライアントにどうしたらいいのか」「自分がクライアントにどのように働きかけたらいいのか」については、教えてくれません。
上述を踏まえると、適切な課題解決を行うためには、「科学知」だけではなく、科学知を補う「臨床知」が必要になってきます。
中原教授によると、「臨床知」とは、他ならぬ「わたし自身」が、個別・具体的で、それぞれ固有の意味を有した人々との出会いを通じて、彼らに働きかけつつ、達成されるような、もう一つの「知のあり方」と表現しています。
さらに、コンサルタントは現場を探り、現場の実践に最もフィットする科学知に学びながら、同時に臨床知を発揮して、現場の人々と対話し、彼らに働きかけ、実践をくみ上げなければならない。と述べています。
言い換えると、科学で解決できるのが3割ならば、残りの7割は、コンサルタントが自分の足と手でクライアントに関わり、クライアントとともに「探索」していくほかはないということです。
これを実践する人について、中原教授は、「アカデミック・プラクティショナー:高度な科学知に根ざしながら経営・現場に価値貢献できる実践者」と定義しています。
「科学知」と「臨床知」による「両利きのコンサルティング」とも表現できますが、理論による、方向づけと、「この事案・案件であればどのような解決が必要か」という点については、事案や案件ごとに異なってくることが当然ですから、それを探索し、解決に導いていく臨床知を行き来しながら進めていくことを認識することが必要だと思います。